終了

  • 主催

  • 講演

    インパクトを生み出すまちへ。動かすのは “人と組織 ”

    〜職員主導の計画づくりと実践がもたらす、これからの自治体経営〜

    日時 

    2026年6月30日
    (火)
    15:00〜18:00

    登壇者

    ゲスト:裾野市副市長 大西 千聡、厚真町職員、他

    場所 

    Blooming Camp 3F イベントスクエア
    大阪市北区大深町6番38号 グラングリーン大阪 北館 JAMBASE 3F

    費用 

    無料

    定員 

    50名(行政で働く方)

    主催 

    株式会社ウエダ本社 × アンドパブリック株式会社

    【イベントレポート】

    2026年6月30日(火)、アンドパブリック株式会社と株式会社ウエダ本社は、グラングリーン大阪北館3階「Blooming Camp」にて、自治体職員を対象としたイベント「インパクトを生み出すまちへ。動かすのは“人と組織”」を開催しました。

    当日は、全国から約60名の自治体職員が参加。人口減少や地域課題の複雑化が進むなか、自治体がどのように社会的インパクトを生み出し、持続的な自治体経営につなげていくのかを、「政策」と「組織」の両面から考える機会となりました。

    本イベントの背景には、優れた計画や施策があっても組織内で十分に浸透しない、あるいは持続的な成果につながりにくいという自治体現場の課題意識がありました。そこで第1部では、北海道厚真町における職員主導の総合計画策定を題材に、社会的インパクトを意識した政策設計のあり方を紹介。第2部では、静岡県裾野市の大西千聡副市長を迎え、行政組織の文化や職員のマインドをどのように変えていくかを議論しました。イベント全体を通じて共有されたのは、制度や計画を「つくる」だけでなく、それを実行する人と組織をどう育てるかが、社会的インパクトの実現を左右するという視点でした。

    第1部:総合計画を“職員主導”でつくる意味

    第1部のテーマは、「社会的インパクト志向で地域はどう変わるのか」。登壇したのは、厚真町地方創生担当理事の大坪秀幸さん、厚真町まちづくり推進課の小松美香さん、アンドパブリック代表の桑原憂貴。モデレーターは、さくらインターネット株式会社の関浩未さんが務めました。

    厚真町では、総合計画策定のあり方を、従来の外部委託中心から、職員が主体的に関わる「手づくり」のプロセスへと転換しました。職員自身が地域の課題を捉え直し、施策の目的や成果を言語化し、庁内で議論を重ねながら学習の機会として位置づけたことが大きな特徴です。

    アンドパブリック代表の桑原は地域活性化起業人として、このプロセスに伴走しながら、「社会的インパクト」の視点を交え、施策の目的や成果を整理していきました。具体的には住民アンケートやワークショップを通じて地域の声を集め、課題の構造を整理するとともに、施策ごとに「何を実現したいのか」「どのような変化が起きれば成果と言えるのか」を明確にしていきました。

    大坪さんからは、「行政は事業を始めることは得意でも、やめることは難しい」と現場の課題に言及しました。社会的インパクトの視点から事業の成果を客観的に可視化することで、継続の必要性を適切に判断し、限られた予算や人材を本当に必要な施策へ振り向けられるようになることへの期待を語りました。

    小松さんからは、職員プロジェクトメンバーとして、ワークショップで出た意見を各課に持ち帰り、庁内で検討を重ねていく実務のリアルが紹介されました。職員主導の計画づくりは、負荷もかかります。一方で、自分たちで考え、言葉にし、施策のつながりを見出していくことは、計画の実効性を高めるだけでなく、職員一人ひとりの当事者意識を育む機会にもなっています。

    議論の中で印象的だったのが、移住・定住政策における「活躍人口」というキーワードです。人口や関係人口の増減だけでなく、「地域の未来をともにつくる人が増えているか」という視点で政策を捉え直す考え方であり、地域に愛着を持ち、能動的に関わる人を増やしていくことが、これからの自治体経営において重要であることが共有されました。

    第1部を通して示されたのは、総合計画の価値は、完成した計画書だけにあるのではないということです。むしろ、策定のプロセスで職員が地域を見つめ直し、部署を越えて対話し、成果を生み出す道筋を共有していくこと。その積み重ねが、計画を実行する組織の力を育み、自治体の実践力につながっていくことが示されました。

    第2部:人と組織が変わらなければ、まちは変わらない

    第2部のテーマは、『社会的インパクトを最大化する行政組織のあり方』。

    登壇したのは、裾野市副市長の大西千聡さん、株式会社ウエダ本社代表取締役社長の岡村充泰さん。モデレーターは、アンドパブリック共同代表の長友まさ美が務めました。

    大西副市長は、民間企業で採用や組織支援に携わった経験を持ち、行政経験のない立場から裾野市副市長に就任しました。市長から「イノベーション」と「組織開発」の2つのテーマを託された大西さんが着任後にまず行ったのは、300人を超える裾野市の全職員との面談です。職員一人ひとりの声を聞き、組織の状態を把握しながら、どこに変化の糸口があるのかを見極めていったといいます。

    具体的な取り組みとしては、「さん付け」文化の導入や服装自由化、名刺の公費化など、組織文化を変えていく多様な取り組みが紹介されました。その結果、若手職員から直接アイデアの相談が寄せられるようになるなど、職員同士の関係性や心理的安全性に影響を与えるとともに、職員が自ら動き出すための土壌づくりにつながっていることが語られました。

    議論では、行政組織の縦割り構造や文書主義、前例踏襲の壁をどう越えるかも大きなテーマとなりました。大西副市長は、責任者を明確にした横断プロジェクトを立ち上げること、部長を「経営者」、課長を「事業責任者」と位置づけることで、組織がより自律的かつ機動的に動けるようにするという自身の考え方を紹介しました。「管理職の器が組織の器を決める」という言葉からは、組織全体の意思決定や責任構造に踏み込んでいく必要性が伝わってきました。

    岡村さんからは、ウエダ本社が地域企業として取り組んできた組織変革や行政との連携の経験を踏まえ、「人は認められることで居場所を感じ、自ら挑戦しようという意欲が生まれる」という考え方が紹介されました。そのためには、経営層や管理職が意図的に外部から寄せられた期待や評価の声を現場に届け、職員一人ひとりが「地域から期待されている」「自分たちの仕事には意味がある」と実感できる機会をつくることが重要だといいます。

    また議論では、組織文化を変えていくうえで、職員同士の対話量を増やすことや、偶発的な出会い・協働が生まれる「余白」をつくることの重要性にも話が及びました。硬直した組織に一方的に変化を求めるのではなく、しなやかに動ける余地をつくること。その中で、幹部や管理職には、職員が安心して声を出し、小さく試し、互いに応援し合える環境を意図的に整えていく役割があることが共有されました。

    会場からも、民間から行政に転職した職員の方や、自治体内での革新層と保守層の関係に悩む職員の方から質問が寄せられました。大西副市長は、目立つ改革を進める職員だけでなく、日々の住民の「あたりまえの暮らし」を支える業務に携わる職員にも光を当てることが、組織の一体感をつくるうえで重要だと語りました。

    計画に“熱”を吹き込むために

    本イベントを通じて繰り返し語られたのは、社会的インパクトを生み出すためには、政策設計と組織変革の両方が必要だということです。どれほど精緻な計画やロジックモデルを作っても、それを動かす職員の納得や意欲、部署を越えた関係性がなければ、計画は実行に移されません。一方で、熱意だけでは施策の成果を説明し、継続的に改善していくことは難しい。だからこそ、成果を見える化する方法論と、人と組織を動かす実践の両輪が求められます。

    人口減少や地域課題の複雑化が進む今、自治体には、これまで以上に「何のためにこの施策を行うのか」「どのような変化を地域に生み出したいのか」を問い直す力が求められています。そして、その問いを職員一人ひとりが自分ごととして受け止め、組織として実行していくための仕組みと文化が必要です。

    「インパクトを生み出すまちへ」。その第一歩は、新たな計画をつくることではなく、計画づくりを通じて人が学び、組織が変わり、地域との関係性を育んでいくことにあります。本イベントは、これからの自治体経営に求められる視点と、その実践のヒントを共有する場となりました。

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